大重潤一郎監督について

NPO法人 東京自由大学メルマガに
大重潤一郎監督との出会いを振り返り
書かせていただきました。

今はただただ
『久高オデッセイ 風章』
の公開が楽しみです。




「おぃ‼︎ そこのお前‼︎!」
2010年2月14日 旧正月の久高島。
外間殿の前でカチャーシーをしながら踊っていたとき突然大声で声をかけられた。
島の人が宴をしているテントの方に目をやると泡盛を片手にニコニコしてこちらを見ている白髪の男性が。
「お前の踊りは普遍的だな‼︎ 太陽みたいだ‼︎!」
大いに酔っていたけれど力強く伝えてくれたその人の言葉は素直に嬉しくてそのまま宴に参加して島の人たちと大盛り上がり。おかげで翌日迎えた誕生日は特別なものとなった。

これが大重潤一郎監督との出会い。

沖縄を去る前に那覇へ寄れというお言葉に甘え沖縄映像文化研究所へ。
飛行機時間まであまり時間がない私に自分の作品を観ていけと30分の短編映画『水の心』をみせてくれた。
人々を洗い清め祈りとともにある水。全編に渡って流れる澄んだ水の潤いある音は祈りのようにわたしのなかを流れ、わたし自身の水も清らかに凛と澄み渡るようだった。
ちょうど翌月3月22日国連が定めた”世界水の日”に江ノ島水族館で未来の担い手である子どもたちに水について考えてもらう「世界水の日こども議会」を開催する予定だった私は
”世界水の日”にこの作品を友人たちにもぜひ紹介したいと思い鎌倉長谷のレストラン「麻心」で上映することにし、それにあわせて前日に『久高オデッセイ』上映会を鎌倉で開催することに。
監督と須藤義人さん、NPO法人杜の会 矢野智徳さんも沖縄からわざわざきてくださったおかげで『水の心』の雫が波紋となって力強く広がった意義深い”世界水の日”となった。

その年11月14日には監督の作品に共鳴しあった鎌倉長谷「middles」のノブさんとSUGEEさんと琉球弧を中心としたアジア環太平洋の海の道について伝えていく『海小屋』を開催。
その日監督と須藤さんと大島渚監督の御宅へ開催することを報告しに行った。
小山明子さんが席を外されたその瞬間… 今まで黙っておられた大島さんが一言一言絞り出すように「ありがとう」と仰り、感激した監督が大島さんの手に口づけを…   この一瞬をわたしは生涯忘れることはないだろう。大島さんを訪れた最後の来客だったと後に監督からきいた。


監督が本土へ来る度に藤沢のおけいさんの御宅に泊めて頂いては夜通し呑んでいたっけ…日本酒が苦手だった私に八海山のうまさを教えてくれたのも監督だった。
病院の診察に遅れそうになって車椅子を押して”猛”全速力で走ったり、
タバコの吸えそうな場所にこっそり連れていったり…
監督と過ごす時間は思い出し笑いをしてしまうものばかり。
そして
会うたびに魂震える言葉で、生き様そのもので、叱咤激励してくれた。



ある日モヤモヤして電話で話を聞いてもらっていたら「亜紀‼︎ お前の感覚を信じろ。頭で考えんな!明日、日の出みにいってこい‼︎」と監督。
地平線から真っ赤な朝陽がうまれる瞬間に感涙…刻一刻と表情を変えていく朝陽を目の前に自然と呼吸が深くなり今日という真っ新な一日を楽しもうと思えた…
監督が久高の真っ赤な夜明けをみて自分も島も蘇るときだと生きる力をもらい「命ある限り本物の命を生きたい。」と言っていた言葉を思い出しながら。


監督はわたしに
強烈に”生きる”を教えてくれた人
”命あるもの”としてありのままに



先月3月2日に沖縄へ。3月3日には少し早い監督のお誕生日をお祝いさせてもらい、そのとき「無事に久高オデッセイを完結させること」と抱負を語ってくれた。
3月4日の朝、編集仕上げ前の『久高オデッセイ 風章』をみせてもらった。12年という月日のなかであらゆる状況は変われどそこには監督の変わらぬ生命への眼差しが。三作みて初めて浮き彫りにされる確かなものに触れた気がした。
制作スタッフの比嘉真人さんや高橋あいさんに「お‼︎今のところの編集最高だ‼︎」と嬉しそうに言っている監督をみながら、こうやって根底に流れるこころは次世代に受け継がれていくのだと頼もしく思えた。
”カタチは変われど脈々と受け継がれている変わらないもの”ー『久高オデッセイ 風章』に未来を照らす希望の光を感じ観た後完結に相応しく清々しいキモチでいっぱいになった。

沖縄から戻り3月6日監督の誕生日に電話するとちょうど四宮鉄男さんと森田惠子さんとこの日に編集作業を終え打ち上げをした後だったようで
「今日編集終わった。こんな嬉しいことはない。すごくいいのができた‼︎ 感動するよ‼︎  泣くぞ‼︎ 洗面器もってみるようにな‼︎ 笑」と嬉しそうだった。
なんて素敵な御自身へのお誕生日プレゼント‼︎ 「今日誕生日なの忘れとった」って笑っていたけれど。
次は『久高オデッセイ 風章』の誕生+完結をお祝いできる7月5日を心から楽しみにしています。 
もちろん洗面器もって⁈ 笑

監督と祝杯をあげれる日を願って

  
神田亜紀